1: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 01:43:10.88 ID:wwy4s/vI
スレが立ったら、淡々と書いていく。
おかしなところがあったら、教えてくれ。

2: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 01:44:56.19 ID:wwy4s/vI
まず、俺が高校生だった頃まで話は遡る。
俺の名前はたかおという事にしておいて欲しい。


4: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 01:47:23.47 ID:wwy4s/vI
今回の話と直接関係ないので、特に家庭の事は語らないが、
酷い家庭環境で育った俺は、小中学生と、暗く孤独な生活を送っていた。
友達と呼べる奴はいなく、思い出と呼べる楽しげなものなど皆無だった。

6: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 01:50:48.33 ID:wwy4s/vI
誰かと馴れ合うことを良しとせず、心も荒んでいたので、
ケンカばかりしていたし、また、ケンカが滅法強かった。

8: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 01:54:24.64 ID:wwy4s/vI
ケンカが強い、と言うと、語弊があるかも知れない。
友達がいなかったので、誰かに嫌われたり、仲間外れにされることが
怖くなかったし、いつタヒんでも一向に構わないという気持ちでいたので
ケンカに負けるという定義がなかったというのが本当のところかもしれない。

9: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 01:57:54.86 ID:wwy4s/vI
ただ、辺り構わずケンカを吹っかけるほど情熱があるわけでもなし、
関わらなければ噛みつかないというスタンスだったので、
周りから距離を取られていたし、それがまた有り難くもあった。

11: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:01:05.26 ID:wwy4s/vI
今にして思えば、それは心の未発達からくる、病の一種だったのかも知れない。

12: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:01:55.69 ID:wwy4s/vI
というのも、中学3年のとき、
俺はこのままでは駄目だとはっきりと自覚していたからだ。
このままではいけない。やり直したい。友達が欲しい。人と話したい。
誰かに認められたい。みんなの注目を集めたい。

13: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:03:15.99 ID:wwy4s/vI
何だか、一気に、自我が芽生えて、強烈に欲求が次々に産まれてきた。
幸い高校に上がるとき、俺は家庭の事情からくる、
ある呪縛から自由になることを約束されていた。
自分の「したい」が許される状況を前に、様々な未来を夢想しては愉しんだ。

15: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:05:45.33 ID:wwy4s/vI
高校進学は色んな意味で区切りとなった。
俺は、同じ中学から3人しか行かない、新設校を選んで進学をした。

16: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:07:14.70 ID:wwy4s/vI
全てをリセットして新たなスタートを切るべく、
俺の成績からしたら遥かにレベルが落ちる高校を、
俺を知る人間が最も少ないという理由で選んで進学したのだ。
いわゆる高校デビューという奴を目論んでいた。

18: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:09:29.96 ID:wwy4s/vI
高校に上がってからは、人が変わったかのように明るく振る舞った。
すすんで冗談や下ネタトークをしたり、部活を一生懸命やったり、
ケンカは一切せず、誰かを威嚇したり怒ったりしない、
つまりは小中学生の頃と正反対の人間を目指していた。

19: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:10:47.18 ID:wwy4s/vI
今まで笑わなかった時間を取り戻すかのように、たくさん笑って、
いつもニコニコしてるね、と色んな人から言っても貰っていた。

20: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:12:09.07 ID:wwy4s/vI
当然、同じ中学の奴らは、あいつは中学の時、あんな奴じゃなかった、
なんて影口をたたいたが、狂犬だった頃の目で睨みを効かせたら
すぐに何も言わなくなったし、
誰も俺が本当は暗い人間だという事を信じたりはしなかった。

14: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:03:41.94 ID:yMTlF3po
歌舞伎町のホストだな

22: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:12:49.11 ID:wwy4s/vI
>>14
ホストではない。田舎ものだ。

24: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:14:24.99 ID:wwy4s/vI
自然、俺の周りに人が集まってくるようになった。
小中学生だった頃は他人に距離を置かれていたので気づかなかったが、
俺がイケメンである事こを周りに教えてもらったのもこの頃だ。
入学して半年もすると、数人の女の子から告白も受けた。

26: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:15:32.24 ID:wwy4s/vI
学校のレベルを下げたこともあり、成績もトップクラスであった。
足が速かったから、という理由で入った陸上部では敵無しで、
一年の頃から、地方大会では優勝するレベルであった。

27: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:17:11.80 ID:wwy4s/vI
俺の高校デビューは華々しかった。

29: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:20:09.16 ID:wwy4s/vI
けれども、小中学生と友達のいなかった自分は、
表面上は誰とでも仲良くしつつも、本当の心は誰にも開けないでいた。
学校でも有名な二枚目、スポーツも出来て成績も良い。

30: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:21:15.70 ID:wwy4s/vI
そんな自分を作り上げるしか自分のアイデンティティを保てず、
いつしか、本当は下らない人間だという事がバレる日が来ることを
怖れるようになった。

31: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:22:14.30 ID:wwy4s/vI
そんな、俺の内面を見抜いたやつが一人だけいた。そいつの名は、Kとしておく。

32: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:23:02.10 ID:wwy4s/vI
結果、Kとは高校3年間同じクラスで親友になるやつでもある。

34: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:25:34.37 ID:wwy4s/vI
Kは、何というか、俺とは反対の人間だった。
特に努力をしなくても、自然と人が寄ってくる天然物のイケメンだった。

35: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:26:31.09 ID:wwy4s/vI
ぐいぐい、人の先頭に立ったり、話題の中心になろうとしなくても、
みんながKの事を認めていたし、誰隔てなく優しい男だった。
誰もKの悪口を言わなかったし、Kも誰の悪口も言わなかった。

36: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:29:17.49 ID:wwy4s/vI
俺はどちらかといえば、あまり、人に心を開くことが苦手だったし、
その割には、どうですか、このハイスペックな俺、みたいな
押し付けがましいところがあり、人の嫉妬を買うことも、ままあった。

37: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:30:20.23 ID:wwy4s/vI
そうしないと、下らない人間だという事がバレてしまうという
強迫観念みたいなものに縛られていたのだと、今にしてみれば思う。

39: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:31:27.65 ID:wwy4s/vI
評して言えば、いつも目立っていて、話題の中心になりたがり、
ただそれが行き過ぎて相手を疲れさす、そんな感じの人間だったのだと思う。

40: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:32:22.29 ID:wwy4s/vI
その、他人に優しいKは、俺にだけは何故かいやらしい一面を見せた。

38: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:30:40.62 ID:PFduHV3p
長いな

41: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:33:58.44 ID:wwy4s/vI
>>38
長いんだ。すまない。本来はチラシの裏にでも書くべきものだと思う。

42: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:35:04.22 ID:wwy4s/vI
誰にも一目置かれる俺に対して
「本当はおまえ、そんな奴じゃないんだろ?」
と話かけてきた。

つまりは、高校デビューなんだろ?
もちろん、他に誰もいない二人きりの時にだ。

43: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:35:53.41 ID:wwy4s/vI
普段、誰にも優しく、どちらかといえばドジで愛嬌のあるKにそう言われて、
呼吸が止まりそうなくらい驚いたのを覚えている。
生まれて初めての冷や汗を覚えた俺は、軽く否定しながらも、
こいつとは仲良くならないとヤバイ、と直感的に悟った。

44: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:37:36.16 ID:wwy4s/vI
俺の秘密に気付いたKとはとにかく仲良くならなければ、と
何かと気を使いながら、ともあれ、親友アピールをして表面を取り繕った。

45: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:40:24.35 ID:wwy4s/vI
幸い、校内一二を争うイケメン同士が仲良くつるんでいるという絵面を、
周りも望んでるふしもあり、Kもそれに乗っかる形で俺とつるむようになった。
Kは俺以外には外面の良い男だった。

46: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:41:10.95 ID:wwy4s/vI
そんな風にして、
俺とKは両雄並び立つかのごとく、親友のように振る舞っていた。
誰から見ても、そう見えていたと思う。

47: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:42:05.21 ID:wwy4s/vI
高校2年の時、俺は恋をした。初恋だった。名前はあかねとしておく。
あかねとは2年の時に同じクラスになった。

48: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:43:08.41 ID:wwy4s/vI
髪型はショートカットで黒ぶちの眼鏡をかけていた。
色白で笑顔の可愛い愛嬌のある顔立ちだった。

たくさん喋る子ではないけれど、たまに喋ることがいつも笑いを誘い、
同性の友達が多いタイプだった。

49: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:44:15.91 ID:wwy4s/vI
彼女はクラスのなかでも特に男子の人気が高いわけでもなく、
美人か?と問われれば、愛嬌はあるよね、という答えが返ってくる、
そんな感じの子だった。

50: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:45:34.52 ID:wwy4s/vI
俺があかねを好きになったきっかけは他愛も無い事だった。

51: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:46:25.13 ID:wwy4s/vI
俺の高校はランクの低い進学校にありがちな、校則が厳しく、授業も厳しく、
成績が悪いと名指しで授業中に罵倒されるような軍隊のような学校だった。
当然、授業中に寝ていたりなんて奴などいないし、
余所見することさえ許されなかった。

53: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:47:10.28 ID:wwy4s/vI
今では多分あり得ない事だろうけれども、入学するときに
「我が校の方針に納得、もしくは、従えない時は自主退学いたします」
といった感じの誓約書にサインをさせられた記憶がある。

54: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:47:49.40 ID:wwy4s/vI
ともあれ、そんな学校だったから、教師絶対、授業絶対、課題絶対、
嫌なら退学、実際退学させられた(表向きは自主退学)奴も数人いた。

55: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:48:23.23 ID:wwy4s/vI
そんな学校における、ある英語の授業の事だった。

あかねが教師に怒鳴られた。
授業中、堂々と窓の外を眺めていたのを咎められたのだ。
教師はもっていた教科書を教卓に叩きつけ、顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。

56: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:49:36.27 ID:wwy4s/vI
「あかね!おまえは授業中に何を見とるか!」

クラス中に緊張が走った。今では考えられないかも知れないが、当時、
平気で授業中余所見をしていたとかそんな下らない理由で
教師が生徒を殴ることがままあったからだ。もちろん、男女関係無しだ。

58: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:51:40.94 ID:wwy4s/vI
けれども、あかねは臆するでもなく、飄々とした声で
「カラスの数…」

「なにぃ?」と教師。

「校庭のカラスの数を数えてた。」
と言ってのけた。

59: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:52:36.58 ID:wwy4s/vI
そのあまりのすっとぼけた声と、思いもよらない返答に
クラスは大爆笑した。普段のあかねのキャラも手伝ったのかも知れない。
教師も呆気に取られたあと、一緒に苦笑いするしかなかった。

60: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:53:26.09 ID:wwy4s/vI
俺はこの時、雷にあたったがごとく、衝撃をうけた。
Kもあかねもそうだが、こいつらは俺のように必タヒにならなくても人を惹きつける。

61: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:53:59.08 ID:wwy4s/vI
滲みでる人の良さで同性からも異性からも愛されるK。

すっとぼけた天然キャラで同性からも好かれ、
教師からもなんとなく愛されているあかね。

62: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:54:40.66 ID:wwy4s/vI
そう、このふたりに共通するのは、愛される存在、ということだった。
それは高校でやり直し、それなりの立ち位置を得たかに思えた俺に、
圧倒的に足りないものだ。
話題の中心にいて、多くの友達に囲まれていると思っていながら、
ふと感じる孤独の正体がこれなのだ。

63: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:55:23.78 ID:wwy4s/vI
嫉妬、それから、俺は、所詮作りものの似非であるという
おのれに対する失望。本物に対するあこがれ。

64: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:55:57.19 ID:wwy4s/vI
Kという同性に対しては、嫉妬は、尊敬に形を変えていったが、
あかねという異性に対しては、やがて恋愛感情という形に変わっていった。
俺は強烈にあかねを好きになっていた。

65: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:56:20.11 ID:vE/X9W3h
色々なことに気づけると、力の抜き方を覚えるよね

僕は25のときに抜き方を覚えて
楽になったよ

69: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:59:47.50 ID:wwy4s/vI
>>65
未だ、人との距離感が掴めません。

66: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:56:58.81 ID:wwy4s/vI
幼い頃に人間関係を学んでこなかった俺に、突然芽生えた恋心。
俺は気持ちを制御する術を全く知らなかった。

67: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:57:33.83 ID:wwy4s/vI
1日たてば、好きという気持ちに利息がつく。
日がたてば立つほどに好きになる。

あかねに対する新しい情報は、その内容の如何に関わらず、
好きな気持ちの肥やしになった。

68: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 02:58:34.51 ID:wwy4s/vI
重ねて話す。俺はあかねが好きだった。
なんとしても告白して、受け入れてもらいたかった。
失敗など許されなかったし、考えるだけでタヒにそうだった。

70: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:00:34.65 ID:wwy4s/vI
俺はもっと、もっととスペックを集め始めた。

71: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:01:12.65 ID:wwy4s/vI
勉強も部活もより一層磨きをかけたし、当時ブームだったロックバンドを組んで、
ライブハウスで演奏するほど短期間でうでをあげ、固定のファンも数人できた。
優等生キャラにちょっと不良のテイストを混ぜた。
女の子に受けそうなものは、ひとつでも多く必要だと考えていた。

72: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:02:20.77 ID:wwy4s/vI
自信を少しずつつけた俺は、
俺があかねを好きで付き合いたいと思っていることを親友のKに相談した。

73: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:03:17.07 ID:wwy4s/vI
俺があかねの事を好きなことは、Kはとっくに気付いていた。
というより、クラスの誰もがうすうす感づいていた、
いわば、公然の秘密であったらしい。
あとは、いつ告白するのか、早く告白しちゃえばいいのにね~、と
そんな感じだったらしい。

74: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:04:09.37 ID:wwy4s/vI
Kも、早く告白しちゃえよ、と言ってくれたし、俺も、
後は勇気を出して告白するだけだ、
それさえすませばあかねと付き合えるんだ、そう信じて疑わなかった。

76: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:04:50.98 ID:wwy4s/vI
そして、告白した。
電話をかけて、好きだったことを告げ、付き合って欲しい願望を伝えた。
あかねは一週間返事を待って欲しいといった。

77: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:05:19.10 ID:wwy4s/vI
結論から言えば振られた。

79: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:07:52.91 ID:wwy4s/vI
俺はひとの気持ちなど何も分かっていなかった。

81: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:09:31.56 ID:wwy4s/vI
優しさや思いやり、といった相対化が難しいことよりも、
履歴書に書けるような具体的な項目を掻き集めることが
自分を良く見せる唯一だと信じていた。
一番良く見せられたものだけが、自由に好きなものを手に入れられるのだ
と信じていた。

82: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:10:38.16 ID:wwy4s/vI
普通に成長していればおそらくこのような感覚は持ち合わせないだろう。
けれども、俺は人知れず「普通」に追いつかなければならなかった。

83: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:11:19.38 ID:wwy4s/vI
手探りで仮説をたて実践をして、反証をして、学問をするかのように
ひとの感情や距離感を学ぶしかなかった。

84: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:12:37.30 ID:wwy4s/vI
俺はKに、何がいけなかったのか、何故振られたのか、
あかねにそれとなく聴いてきて欲しいと頼んだ。
駄目なところがあったら努力して何でも直すつもりだった。
けれどもKからは意外な言葉が返ってきた。

85: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:14:24.85 ID:wwy4s/vI
「もう、あきらめろよ。おまえのこと好きな娘もいたろ?
あかねよりずっと可愛いし、みんな、なんであの娘じゃなくてあかねなんだろ
って不思議がってたぜ?俺もそう思うし、あかねはやめた方がいい。」

86: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:15:13.93 ID:wwy4s/vI
何故だ?
告白する前はあれだけ応援してくれてたのに。

89: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:21:05.15 ID:vE/X9W3h
なんかKの変わりようが
不安な感じだね

90: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:21:46.36 ID:wwy4s/vI
俺はあきらめきれなかった。
クリスマスにはプレゼントをあげて、正月には年賀状を送り、
誕生日にはまた、プレゼントを渡した。

91: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:22:49.70 ID:wwy4s/vI
誕生日のプレゼントを渡しに会ったときには、もう、正直に言って迷惑だと言われた。

「学校でも、話かけてこないで欲しい。私のことはあきらめて、
たかお君だったらもっと可愛い娘のほうが似合ってると思うし。」

92: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:23:34.19 ID:wwy4s/vI
そうあかねに言われた。Kと同じことを言うんだなと思った。

それでも俺はしつこかった。他の娘のことなんか考えられないし、
いつまでも待っていると告げると、あかねは泣きだした。

94: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:26:09.95 ID:wwy4s/vI
「わたし…K君の事が好きなの…」
あかねは白状した。だから、俺の気持ちが本当に迷惑だと。

俺が告白した数日後、Kに相談したらしい。
そして、あかねが本当に好きなのはKだと、あかねが告白したらしい。

95: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:26:38.01 ID:vE/X9W3h
なんと分かりやすい三角関係

96: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:28:22.49 ID:wwy4s/vI
>>95
ベタなことしてました。

97: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:29:36.99 ID:wwy4s/vI
「それで、Kは何て…?」
俺は尋ねた。

「たかお君に悪いから無理って…」

98: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:30:16.27 ID:wwy4s/vI
全てが合点がいった。
あかねが冷たくなったのも、Kがあきらめろといったのも。

99: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:30:58.12 ID:wwy4s/vI
あかねの中では完全に俺は邪魔者になっていた。
俺のせいでKに振られたと考えていた。
俺が諦めればKは付き合ってくれるかもしれない。そうも、考えていたのだろう。

100: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:31:38.54 ID:wwy4s/vI
俺はKの対応に疑問を持った。

Kには他に好きな子がいるというのを聞いていた。
相手は教えてくれなかったが、それは、あかねではないことは確認済みだ。
俺はKがあかねを好きでなければ、正直、Kが誰を好きでいようと問題ではなかった。

101: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:32:35.97 ID:wwy4s/vI
Kは何故、好きな娘が他に居るのを隠すのか。
何故Kは、「俺に悪いから」という理由で断わったのか。

それが俺には分からなかった。

105: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:34:29.12 ID:ZMjaOtjE
Kの気持ちが気になりますな…

102: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:33:10.10 ID:wwy4s/vI
あかねは俺と同じように募る気持ちをコントロールできずに、
Kに対する恋心を大きく育てていった。
その気持ちが大きくなればなるほど、俺への感情は憎悪、嫌悪へと変わってゆく。

103: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:33:43.53 ID:wwy4s/vI
高校三年はあかねとは別のクラスになり、
あかねはそのクラスで軽いいじめに会っていたようだった。
理由は、俺がかつて振ってしまった女の子に目を付けられて
シカトされたり陰口を叩かれたり、女の嫉妬だった。

104: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:34:14.03 ID:wwy4s/vI
結局、俺の初恋は失恋に終わった。今にしてみればよくある話だし、
何て事は無いホロ苦い失恋ばなしだと言えば、そうだろうなと思う。

107: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:35:27.89 ID:wwy4s/vI
けれども、この失恋は、俺に
深い傷とKに対しする拭いようのない劣等感を残していった。

106: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:34:48.21 ID:vE/X9W3h
誰も悪くないのに状況が悪いと
1みたいな生真面目な人が進んで犠牲になるよね

108: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:37:16.86 ID:COd6JsKY
>>106
犠牲者ではない。加害者だ。

109: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:38:14.07 ID:COd6JsKY
高校を卒業して、あかねはとある大手メーカーの事務員に就職した。

Kと俺は別々の大学に進学して、付き合いも疎遠になっていった。

110: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:38:55.45 ID:COd6JsKY
ひとり暮らしをはじめ、
俺は高校の時のように無理に明るい人間になるのをやめ、
普通の人間になれるように努力していた。

111: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:39:34.28 ID:COd6JsKY
高校の時にはじめたバンドの経験を活かし、
ロックバンドが集まるサークルに入り、
新しい環境、新しい友達、新しい自分を形作るなかで、
初めての彼女もできた。

112: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:40:13.43 ID:COd6JsKY
大学に行き始めて2年たったころだろうか、俺の家に突然、
馴染みのない声で電話がかかってきた。

うちの娘がそちらに行ってないか、とのことだった。

113: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:40:59.75 ID:COd6JsKY
あかねの父親だった。

あかねは高校卒業後、実家から通勤していたらしいのだが、
ある日突然帰って来なくなったとのことだった。会社にも連絡したが、
無断欠勤で会社も連絡しようとしていたところだという。

115: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:42:44.86 ID:COd6JsKY
親父さんは高校のとき、あかねの口から、Kと俺の名前をよく聞いていた
という理由で、まずKに連絡したらしい。
Kは実家通いなので卒業アルバムから連絡先を調べたとのこと。

117: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:43:43.65 ID:COd6JsKY
Kは知らないといい、たかおではないかということで、
俺の連絡先を聞き出し電話をしてきた、というのが顛末だった。

118: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:44:24.06 ID:COd6JsKY
当時はまだ携帯電話が普及し始めの頃で、持っていない人間の方が多かったと思う。

119: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:45:00.08 ID:COd6JsKY
俺は久しぶりにKに連絡をとった。

Kの話によると、あかねは就職後、勤め先の上司と不倫していたらしい。
その上司との不倫が奥さんにバレてちょとした修羅場があったそうだ。

120: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:45:52.12 ID:COd6JsKY
あかねの友達とKの彼女が繋がりがあるらしく、Kの彼女からの情報だ。

上司は会社にもバレて自宅謹慎中。
あかねは、父親にバレてめちゃくちゃに殴られたらしい。
その3日後の家出ということのようだ。

122: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:46:37.74 ID:COd6JsKY
俺は心配だった。心配だったし、責任も感じていた。
俺が告白したことで、Kへの恋の道も絶たれ、高校最後の一年を
陰湿ないじめで棒にふった。それを助けてやることもなかった。
その、あかねが大変なことになっている。

123: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:47:37.52 ID:COd6JsKY
そうはいっても、心配ではあったものの、俺には何をする事も出来なかった。
Kとも相談したがKも同じだった。

124: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:48:38.53 ID:COd6JsKY
ひとりの大人が行方をくらまそうという意思を持って姿を消せば、
それを捜し出す事は容易ではない。また、捜し出したところで、
では、その後の事は?と問われれば、答えも見つからない。

125: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:49:12.64 ID:COd6JsKY
そもそも、どの立場からどのくらいまで首を突っ込んで良いかも、
皆目、見当もつかなかった。

126: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:49:52.75 ID:COd6JsKY
俺は、高校時代の友人として、心配なので何か分かったら連絡して欲しい
と、親御さんに伝えた。そして、それぎり、何もできないでいた。
あかねのことは暫く沙汰もない状況が続いた。

127: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:50:20.95 ID:COd6JsKY
ひと月程たったある日、あかねから電話がかかってきた。

128: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:50:55.94 ID:COd6JsKY
「たかお君?久しぶり…。うちの親が、その…迷惑をかけちゃったみたいで…」

129: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:51:52.73 ID:COd6JsKY
俺は告白した時以来の心臓の高鳴りを覚えた。

あかねとの恋は、確かに終わったことだ。
新しい環境、新しい友達、初めての彼女。他人との距離感とひとの心を
相変わらず学問のように学んでは、それなりに順応していた自分は、
けれども、その声を聞いただけで、あっというまに高校時代に引き戻された。

131: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:53:10.50 ID:COd6JsKY
高校のとき、あれ程聴きたいと切望していた声がいま
自分の家の受話器から聞こえる。そして、その声が発する言葉は、
自分ひとりに向けられたものである。その些細な事実が
あの頃どれほど欲しくて欲しくてたまらなかったことだろうか。

132: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:53:46.32 ID:COd6JsKY
暫くの沈黙があった。
俺は頭が混乱していたし、あかねは次の言葉を見つけられないでいた。

「元気?」
やっとのことで捜し出した、俺の精一杯の言葉だった。

133: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:54:58.58 ID:COd6JsKY
「うん…。たかお君は?」
「…。心配…、してたよ」
「ごめんなさい」

あかねの「ごめんなさいは」、正直つらかった。
振られた時と同じ声のトーンだったからだ。

135: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:55:48.92 ID:COd6JsKY
けれども、あかねはきっとこの数日間、色んな人たちに
何度も何度も「ごめんなさい」を言い続けたのだろう。
許される、許されないを別にして、何度も何度も。
客観的に見て、大して謝罪の対象にならないこの俺にまで
「ごめんなさい」を言わなければならない。

136: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:57:12.83 ID:COd6JsKY
切なかった。力になりたかった。

「なあ、どっかで会わないか?」
自然に言葉が出てきた。

137: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:58:44.44 ID:COd6JsKY
あかねが高校最後の年、いじめを受けていたのを知りながら、
何もしなかった自分を思い出した。
何ができるわけではないのかもしれない。でも、何かをするべきだったのだ。

139: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 03:59:44.11 ID:COd6JsKY
あかねは会うことを承諾し、翌日、
地元のファミリーレストランで待ち合わせることにした。

140: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:00:10.91 ID:COd6JsKY
電話を切ってから、俺は頭がくちゃくちゃになる程、いろいろ考えた。
けれども考えを整理するには情報があまりにも少な過ぎた。
ただひとつの結論は、何があってもあかねの味方でいよう、ということだった。

141: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:00:47.35 ID:COd6JsKY
数年振りに会ったあかねは、凄く綺麗になっていた。
美人か?と人に問えば何を当たり前のことを、という答えが返ってくる。
贔屓目無しに、それ程、綺麗になっていた。

142: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:01:16.45 ID:COd6JsKY
髪型もショートカットで相変わらずなのに、全てが洗練されていた。
メイクはしているよね?という程控えめだが、もともと、色白なので
さほどする必要がないのかもしれない。メガネはコンタクトにしたようだ。

143: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:01:53.40 ID:COd6JsKY
俺は自分の近況を簡潔に話した。
また、あかねも知っているクラスのほかの奴らの近況を話した。
当たり障りのない話をしてあかねの言葉を待った。Kの話はしなかった。

144: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:02:27.19 ID:COd6JsKY
あかねはここ最近、自分の身の上に起こったことを話し始めた。
上司は10歳年上の妻子持ちだった。会社の飲み会で密かに口説かれた。
会社で、他のひととは区別して、さりげなく優しくされた。
そして、あかねには特別重要だったこと。雰囲気がKに似ていた。

145: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:03:35.92 ID:COd6JsKY
あかねは悪いと知りつつ不倫にはまっていった。

俺はこれからどうする気か尋ねた。
あかねは、今は話せないと言った。
俺に何か出来ることがあったら何でもいいから、教えてくれと頼んだ。

146: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:04:11.44 ID:COd6JsKY
何もない、ただKには黙っていて欲しいとのことだった。

147: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:04:48.81 ID:COd6JsKY
俺はもう何も言わなかった。
言うべき事はあったのかもしれない。
ただ、Kの名前が出てきたことがこの会合をお開きにさせる為の、
あかねの合図のように思えた。

148: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:05:17.16 ID:COd6JsKY
きっと上司は何を言ったとしてもあかねとの事は遊びなのであろう。
あかねにしても上司に対してそこにKを重ねて代用していたにすぎない。
いずれにせよ、俺はこのふたりのドラマの脇役ですらなかった。

149: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:05:51.46 ID:COd6JsKY
俺はそれ以上立ち入らなかった。障りのない話をして、
何処かで拾ってきたような凡庸な励ましでお茶を濁して別れを告げた。

150: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:06:31.55 ID:COd6JsKY
それから数年、あかねとは会う事は無論の事、風のうわささえ耳に入る事はなかった。

数年後、突然、あかねからメールがやって来た。

152: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:07:14.65 ID:COd6JsKY
「お久しぶりです。あかねです。覚えていますか?」

153: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:07:56.56 ID:COd6JsKY
当時、俺はフリーターでバンドマンだった。大学は中退し、新たなバンドを組み、
いわゆるインディーズレーベルを立ち上げてバンド活動に忙しかった。

155: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:08:52.63 ID:COd6JsKY
携帯ツールの劇的な変化、ネット社会の黎明期、
高校の時は家の電話にかけて親の存在を気にしながら、喋ったもんだぜ、
なんて若いやつらに言えば、昭和ですね、のやりとり。そんな時代だった。

156: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:09:24.03 ID:COd6JsKY
何故俺の連絡先を知っているか、理由を聞けば、話は簡単だった。
当時、バンドのホームページを開設していて、その、
ホームページの中の俺のブログにコメントを残すと
俺のメールに送られてくる仕組みだった。

157: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:10:05.58 ID:COd6JsKY
何故、俺のバンドを知っていたかというのは、
検索でなんとなしに、Kの名前を捜してみて、その後、俺の名前を
検索してみたらヒットしたというわけだった。

158: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:11:05.03 ID:COd6JsKY
「あたしが幸せだった頃を思い出してね、検索してみたらヒットしてびっくりしたの」

そんな内容のメールだった。

159: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:11:42.68 ID:COd6JsKY
幸せだった頃?
俺の知っている限り、あかねが幸せだった頃などなかったように思うのだが。

あれから、上司とうまく行ったという事なのか?
それとも、また別のひとと結婚して幸せだということか?
けれども、それであるならば「幸せだった頃」というのもおかしい。

160: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:12:27.06 ID:COd6JsKY
メールでお互いの連絡先を交換したあと、俺は数年前と同じように、
また会えないか、と尋ねた。
一週間後なら都合がつくとの事だったので、ならばまた地元で、というと、
それよりかは、今、俺の住んでいるところの方が近いというので、
とりあえず最寄りの駅でという約束をした。

161: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:13:21.79 ID:COd6JsKY
あかねは、今はもう地元を離れ関西の方にいるらしい。
声は変わらないが言葉は関西弁であった。

162: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:17:39.45 ID:COd6JsKY
一週間後、数年振に会ったあかねは、何というか、別人だった。
髪の毛はだらし無く伸びていたし、白髪も少なからず混ざっていた。
眉毛は伸び放題で、大分痩せたのか、頬は鋭くこけていた。

164: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:18:22.96 ID:COd6JsKY
久しぶりと笑った笑顔には前歯がひとつ欠けていて、言葉は悪いが
みすぼらしいというのが正直なところだ。

165: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:20:39.39 ID:COd6JsKY
全体的な印象で言えば、老けて見えた。
歳は少なく見積もっても、俺より、10歳は年上に見える。

167: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:23:01.91 ID:COd6JsKY
清潔感と言おうか、清楚と言おうか、あかねの持ったいた全ての良かったところが、
完膚なきまでに損なわれていた。
何かで見た、戦争で爆撃を受けて焦土と化した地方都市の白黒写真。
そんなイメージが、目の前のあかねに重なって見えた。

168: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:23:49.57 ID:COd6JsKY
「たかお君は全然変わらへんな」

あかねははにかみながら言った。
俺とあかねは駅の近くの居酒屋に入った。
そして、おたがい生ビールとつまみ数種類をたのみ、
運ばれてきたビールで軽く乾杯をした。

169: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:24:34.96 ID:COd6JsKY
「バンド、まだ頑張ってんねんな、ネットで叩いてみたら、名前出てきてびっくりしたわ」

170: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:25:32.95 ID:COd6JsKY
「あれから、」とだけ言って、俺は躊躇した。
あかねの容姿を見たら、その変わり様に、
決して幸多き人生を歩んできた訳ではないことは想像に難くない。

聞きたい事は山ほどあったが、その全てが聞いてはいけないことに感じられた。

171: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:26:21.22 ID:COd6JsKY
あかねは、察して笑った。
「随分変わったやろ?もう、おばさん通り越しておばあさんやわ」

172: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:27:01.10 ID:COd6JsKY
そういうとあかねは「あれから」の事、
つまり前回俺たちが会ったときのその後を語り始めた。

173: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:27:54.41 ID:COd6JsKY
予想通り、あかねは上司に捨てられていた。
家出のあといちど実家にもどり、すぐ部屋を借りてひとり暮らしを始めた。

会社は自主退職した。
上司の奥さんから訴えられそうになったが、
お腹に宿した上司との子供を堕胎することで水に流すことになった。

174: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:28:34.21 ID:COd6JsKY
2度と上司と接触しない事を条件に、僅かばかりの手切れ金も手にした。
あかねは上司は離婚して、一緒になると信じて疑っていなかった。

175: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:29:17.47 ID:COd6JsKY
あかねと父親の確執は、不倫そのものが原因ではなく、ずっと昔からあったそうだ。
何かにつけて殴ることがあったそうだ。
あかねが家を出て1年後に他界したらしい。

あかねは葬儀にも通夜にも出なかった。

176: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:30:00.26 ID:COd6JsKY
あかねは上司と別れて独り暮らしをはじめた。
そしてすぐに年下の男と同棲をはじめた。
飲み屋でナンパされた相手に付いていってその日のうちに関係を持ったそうだ。

177: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:32:52.93 ID:COd6JsKY
恐らく自暴自棄になっていたのだろう。
この男は絵に描いたようなヒモだった。
ただ、あかねには淋しさを埋める必要があった。
少しばかりの貯金を切り崩し、お金が底をつくと、
あかねはスナックで働くようになる。働かない男にパチンコ代を渡す為だ。

そんな関係が長続きするわけもなく、2人目の堕胎をきっかけに男とは別れた。

178: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:34:12.04 ID:COd6JsKY
次の男は、店の客だった。
男はバツイチ子持ちで、子供は奥さんが引き取っていた。
店に来ては、子供の話をし、子供には会わせてもらえない事を嘆いていた。
次第に情が移ったのか、そこにかつての上司を重ねたのかはわからない。

179: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:34:54.76 ID:COd6JsKY
あかねはまもなくこの男とも関係を持った。
男と関係を持ってから、男はあかねの部屋へ入り浸るようになる。

180: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:35:33.32 ID:COd6JsKY
この男は、一緒に暮らし始めるとあかねに暴力を振るうようになる。
あかねの歯が欠けたのもこの男の暴力によるものであった。

顔が腫れ、歯が欠けると店からはあからさまに嫌な顔をされる様になり、
店を辞めざるを得なくなった。
あかねが3人目を身籠った事がわかると、男は姿をくらませた。

181: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:36:18.85 ID:COd6JsKY
俺は知らなかったのだが、コンパ〇〇〇は
交渉次第で性サービスもするそうだ。無論、断ることも出来るらしい。

182: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:37:14.41 ID:COd6JsKY
「この間もな、禿げでデブな親父に5000円でされたんよ」
あかねは自嘲気味に話した。

183: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:37:56.31 ID:COd6JsKY
ひと通り話を聞いた俺は涙を流していた。同情の涙なのか、後悔の涙なのか、
怒りの涙なのかは分からない。あるいはその全ての涙だったのかもしれない。

この3流ドラマのような下らない女の転落劇。

184: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:39:02.12 ID:COd6JsKY
なぜあかねがそんな人生をおくらなければならないのか?
一体、あかねは何処で何を間違えたのだろう。
どのタイミングで持ち堪える必要があったのだろう。
俺は何処で助けてあげられる可能性があったのだろう。

185: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:39:46.43 ID:COd6JsKY
俺が好きで好きでたまらなかった女を、下らない男達が寄ってたかって蹂躙し、
美しさを奪いとり、生涯を台無しにし、何がどうしたら…。

186: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:40:37.54 ID:COd6JsKY
「選択肢はなかったのか?」
俺はあかねに尋ねた。

「選択肢?」

「俺はあかねが好きだった。好きで好きでたまらなかった。
それはあかねも知っていただろ?何処かのタイミングで俺に連絡を
取ろうとは思わなかったのか?そんな男達に人生をグチャグチャにされる前に、
俺で妥協はできなかったのか?」

187: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:41:51.65 ID:COd6JsKY
「妥協だなんて…」
あかねは言った。

「たかお君はかっこ良かったし、正直、逃した魚は大きかったなぁ~
なんて思うことは、あったんよ。でも、たかお君はK君の親友やったし、
影がちらつくというか、やっぱ考えられへんかった」

188: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:42:34.40 ID:COd6JsKY
あかねはどこまで行ってもKなのだな、と思った。
Kに対する嫉妬心が事あるごとに頭を擡げる。
俺もどこまで行ってもKへのコンプレックスから逃れられないんだな、と
自嘲気味に思った。

189: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:43:21.51 ID:COd6JsKY
「実は、たかお君にお願いがあるの」
あかねは言った。そしてこれこそが今回の再開の目的であると言わんばかりに。

190: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:44:21.70 ID:COd6JsKY
「実は、今度、子供の入園にお金がいって、制服もまだ買われへんくてな、
こんなこと言うのもあれなんやけど、その、お礼にならへんかも知れんけど、
何でもするから…」

俺は察した。金の無心だ。

191: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:45:10.31 ID:COd6JsKY
「いくら必要なの?」
あかねを遮り、俺は尋ねた。

「3万円くらいあれば助かるんやけど」

192: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:45:55.03 ID:COd6JsKY
悲しかった。金の無心をされたからではない。
金の代償として、体を差し出そうとする、あかねのこころの短絡が悲しかった。
あかねの中では他に差し出すものが何もないのだろう。

193: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:46:54.71 ID:COd6JsKY
そして躊躇なく体を売る事に結論を見いだすほど、心は訓練されてしまっていた。
その訓練には相応の数の反復が観てとれた。

194: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:47:57.73 ID:COd6JsKY
「今、そこまで手持ちがないから、振り込むよ。口座番号は今わかる?」

「今は分かれへん」

「じゃあ、分かったらメールして。すぐ振り込むから。」

「それと、お金は返さなくていいから。借りた負い目や返せない負い目、
そんなことで人間関係を壊したくないんだ。渡せなかった、
子供の出産祝いだと思って協力させて」

195: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:48:50.61 ID:COd6JsKY
俺がそういうとあかねは涙声でありがとう、と言った。
かなりの勇気がいっただろう。

穿った見方をすれば、
あかねの身の上話も、5000円のくだりも、
全ては金を引き出す為の、お涙頂戴ストーリーなのかも知れない。

196: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:49:52.58 ID:COd6JsKY
でも、あかねは俺に頼ってくれた。それで充分だった。

正直に言えば、今この場で金を渡せないわけではない。
手持ちは心もとなかったが、近くのコンビニのATMで降ろしてくれば
それで事足りる。けれども、今この場であかねに金を渡せば
あかねと関係をもたないといけない様な気がした。

197: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:50:28.64 ID:COd6JsKY
それは、俺にはとても出来なかった。
それをする男は、この女の人生ごと抱きしめる男でなくてはならないし
そうであって欲しかった。でも、俺がその男になるには、あまりに遅すぎた。

198: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:51:03.17 ID:COd6JsKY
その夜、あかねと別れて、ひとり、酒を飲みに行った。

199: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:52:24.56 ID:COd6JsKY
俺は、5000円であかねとした禿げデブ親父のことを考えた。
それから、あかねの上司やヒモ男、暴力男とも交されたであろう情事を。

200: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:53:04.96 ID:COd6JsKY
俺がどんなに望んでも、触れることすら許されなかった存在に、
いとも簡単に触れて人生を壊していった男達のことを考えた。

201: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:53:12.80 ID:1h6F+DTZ
文章力無さすぎだしパクリだろこれ

202: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:54:35.38 ID:COd6JsKY
>>201
文章力なくてすまん。パクリではない、ベタで鬱な人生なだけだ。

203: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:55:41.14 ID:COd6JsKY
そして、Kのことを考えた。
Kは唯一俺の闇に気付いた男だ。
それが為、親友になった男。

俺がいなければ、あかねはいつかKとの思いをとげられたのだろうか。
Kと俺が親友でなければ、俺とあかねは付き合うことがあったのだろうか。
あかねはあかねであることを損なうことはなかったのではないか。

204: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:57:15.13 ID:COd6JsKY
Kがいなければ。
俺がKであったなら。
KがKじゃなければ。

205: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:58:56.30 ID:COd6JsKY
いろんな思いが交錯して、頭がかなり混乱した。
取り出そうと手を伸ばせば伸ばすほど、答えは奥に入り込んで行ってしまう、
そんなもどかしさを感じた。

206: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 04:59:29.62 ID:COd6JsKY
考えれば考えるほど酒を飲みたくなったし、飲めば飲むほど考えは混乱した。
気が付けば、部屋のベッドに吐いて眠っていた。
どうやって帰ったのかは覚えていない。

207: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:00:07.13 ID:COd6JsKY
あかねからのメールがやってきたのは数日あとだった。
銀行名と口座番号と氏名、それから、よろしくお願いしますの文字。
最後にまたいつもの文句が添えられていた。

208: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:00:55.21 ID:COd6JsKY
「K君には絶対に言わんといてな」

209: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:01:38.36 ID:COd6JsKY
俺は3万円振り込んだあと、かすかな違和感を覚えた。
違和感というより、小さな怒りの炎のようなものかもしれないし、
嫉妬の炎かも知れない。

210: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:02:18.19 ID:COd6JsKY
いつも、Kだ。
そもそも、俺がいちいちKに報告するとでも考えているのだろうか。
だいたい、Kには絶対に知られたくなくて
おれには知られても一向に構わないというのだろうか。

211: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:02:52.07 ID:COd6JsKY
なぜ、毎回、あかねは念を押すのだろうか。
本当はKに話して欲しいのではないか。
だからこうやって連絡してきたのではないか。

あかねのことだ。
心配して電話してきたKの声が聞ければそれで幸せなのだろう。

212: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:03:30.61 ID:COd6JsKY
投げやりに俺はそう思った。

無論、あかねの人生の転落は俺にもKにも責任はない。
ただ、無関係ではないはずだ。一方の俺はあかねの転落話に心を傷め、
一方のKは何も知らないでのほほんと生きている。
そのくせに、あかねの中でいつも特別なのが気に入らなかった。

213: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:04:03.39 ID:COd6JsKY
俺はKに電話をした。

214: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:04:50.79 ID:COd6JsKY
数日後、あかねから罵詈雑言の電話がかかってきた。
ほとんどが内容を聞きとれないものだったが、その怒気だけは伝わってきた。
俺の話など挟む余地なく、一方的にまくしあげて、電話を切られた。

215: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:05:41.82 ID:COd6JsKY
Kがあかねに電話したようだ。わかってはいた。そう仕向けたのだから。

間を置いてきちんと説明しようと思った。
Kには内緒にして欲しい、その言葉に少し傷ついていることを。
もちろんKにはあかねの混みいったことは話していないし、
声を聞く機会も作ってやりたかった、と。

216: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:06:28.63 ID:COd6JsKY
あかねからメールが来た。
「お金はありがとうございました。もう二度と連絡はしません。」
「さよなら」

217: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:07:07.82 ID:COd6JsKY
俺はすぐあかねに電話をしてみた。繋がらなかった。
メールを送っても未配信になった。
あかねとの繋がりは、俺の過ちで完全に切れた。

218: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:07:45.84 ID:COd6JsKY
あかねの負った傷の深さを俺は見誤っていた。

219: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:08:16.67 ID:COd6JsKY
Kからあかねの訃報の電話があったのはその一週間後だった。
タヒ因は分からないとのことだった。
Kの彼女からの情報で直接聞いたわけではない。
通夜も行わず、親族だけの密葬になるそうだ。けれども俺には、思うところはあった。

220: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:08:46.84 ID:COd6JsKY
自杀殳ではないだろうか。

221: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:09:27.07 ID:COd6JsKY
それを確認する手段は俺にはなかった。いや、正確に言えば
確認しようとしなかった。卑怯な事だけれども、仮に自杀殳であったなら
それに関与したという事実を認めたくなかった。

俺は意図的に自杀殳という言葉を避けた。

224: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:10:47.38 ID:COd6JsKY
自分自身に言い訳をした。事故かも知れない。病タヒかも知れない。
譲って、自杀殳であったとしても、将来を悲観してのことかもしれない。

225: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:11:48.55 ID:COd6JsKY
俺がKに話したのはあかねの近況だった。
いま、あかねはどこどこにいて、子供がひとりいて、
残念だけど離婚してしまったみたいで、(ここは嘘をついた)

226: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:13:29.51 ID:COd6JsKY
Kのことも懐かしがっていたぜ、また、ヒマをみて連絡してやれよ、
そんな内容だった。

227: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:14:13.44 ID:COd6JsKY
でも、あかねからしてみれば俺がKに話した事実は変わらないし、
どこまで話したか、というサジ加減など分かりもしない。
Kがさわりのない事を話したとしても、
気を使われているとあかねが考えれば同じことだ。

228: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:14:48.22 ID:COd6JsKY
あかねは何故タヒんだのだろう。おそらくは自杀殳だったのだろう。
自杀殳だったとして、その目的は俺への復讐なのだろうか。
俺があかねをタヒなせたのだろうか。

229: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:15:22.87 ID:COd6JsKY
大学生だったころ、法学の講義冒頭で、教授が話していた事を、
ふいに思い出した。

230: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:16:18.45 ID:COd6JsKY
「罪には3つの種類がある。ひとつは、法律を守らなかった罪。
これは、これから、われわれが学ぶ学問であるが、
その大小、損失具合で相応の罰が与えられる。

231: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:16:54.78 ID:COd6JsKY
もうひとつは、宗教における罪。教義に於いて、
あるいは神によって、これもまた、量刑をへて、罰せられる。

232: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:17:27.72 ID:COd6JsKY
最後に、道徳的な罪。実はこれが一番厄介だ。
確実に存在するにもかかわらず、その基準はおのおのまちまちである。
そして罰も与えられない」

234: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:18:13.85 ID:COd6JsKY
罪に対して与えられるのが罰。罰とは救済なのではないか、と俺は考えた。

犯した罪に対して罰という目に見える苦痛を与えて、
それを受け入れることで罪の意識を消してくれる。
だから、罰とは、「与えられる」ものなのだ。

235: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:20:25.25 ID:COd6JsKY
罪そのものは消えなくても、「罪の意識」からの救済はある。
それならば、俺の犯した罪に、一体誰が罰を与えてくれるのだろう。

236: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:21:01.07 ID:COd6JsKY
あかねを不幸にさせた男の名簿の最後に、俺の名前が書き加えられる。
そして、その名簿から俺の名前を消すチャンスは永遠に損なわれた。
無論、更新される事もない。一番最後なのだ。

237: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:23:30.81 ID:COd6JsKY
俺は間違っていた。俺は嫉妬して頭がおかしくなっていたのだ。
君を傷つけることで、俺のことを分かって欲しかった。
それがどれだけ残酷なことか、俺はきちんと理解していなかった。

ごめんなさい。本当に申し訳なかった。だから、どうか、俺に罰を与えて欲しい。

239: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:24:15.74 ID:COd6JsKY
いまでも心の中で何度も悔いている。

242: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:25:02.24 ID:COd6JsKY
あかねが亡くなってから、1年と少したった頃、高校の同窓会があった。
高校3年生の時の同窓会なので、あかねと関わりがある会ではないのだが、
Kも行くとのことで、俺も参加することにした。

244: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:26:05.55 ID:COd6JsKY
ひとつだけ、聞きたいことがあったからだ。

245: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:26:59.96 ID:COd6JsKY
懐かしい顔が並び、みんな酒が進んでいた。
おう、どうした?おい、老けたな、いま、何やってんの、結婚は?仕事は?

247: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:27:34.97 ID:COd6JsKY
席のあちらこちらでそんな内容の言葉が飛び交っていた。

遅れてKがやってきて、一通りのやり取りの後、Kは俺のところへやって来た。
Kと他愛の無い話しをして酒を酌み交わした。あかねの話は出て来なかった。

248: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:28:19.60 ID:COd6JsKY
「ところで、たかおさ、俺、結婚するぜ」
Kは言った。

249: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:28:56.60 ID:COd6JsKY
「そうか、まあ、おめでとう。」

250: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:29:42.58 ID:COd6JsKY
ふと、俺は疑問に思った。そういえば、俺は高校の時から含めて、
Kの彼女の名前すら知らない。
高校3年の時、受験のうやむやとあかねとのことのごたごたで、
付き合った事実しか知らなかった。その時の彼女だろうか。

254: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:33:39.44 ID:COd6JsKY
「相手は高校の時からの彼女?」

256: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:37:29.31 ID:COd6JsKY
「そう、いろいろあったけど、まあ、ケジメ婚てやつかな」

「相手は俺も知ってるやつか?」

257: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:38:22.38 ID:COd6JsKY
「覚えていれば知ってるやつだ」

「誰だよ、教えてくれよ」

258: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:39:04.29 ID:COd6JsKY
Kは名前を言って、俺は驚いた。

259: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:39:55.31 ID:COd6JsKY
高校始めの頃、俺が告白されて振った子のひとりだった。

260: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:40:50.74 ID:COd6JsKY
「今だから言うけどさ、俺、たかおに嫉妬してたんだよね」

「おまえが、俺に?!」
まさか、と本気で思った。

261: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:41:46.59 ID:COd6JsKY
Kの話だと、彼女とは小学校からの幼馴染で、
Kはずっと想いを寄せていたらしい。高校に入って俺を好きになった彼女が、
幼馴染で俺と同じクラスのKに探りを入るよう頼んだそうだ。

262: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:42:38.34 ID:COd6JsKY
Kは俺と同じ中学のやつに、俺のことを聞いて、
あまり良い評判を聞かなかったことを教えても、
彼女は聞く耳を持たなかったという。

264: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:43:49.27 ID:COd6JsKY
「正直、たかおには早く誰かとくっついて欲しかったよ。
あかねでも、別の誰かでも」

267: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:48:44.79 ID:COd6JsKY
そういうことか。俺は腑に落ちた。
どうしても分からなかった違和感がひとつに繋がった。

268: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:49:58.16 ID:COd6JsKY
「だって、たかおさ、あの頃めちゃめちゃ頑張ってたっていうか、ほら、
なんか部活でもいいところまで行ってたし、
全国大会まで出たんだっけ?バンドとかも人気あったしさ、
なんか敵わねーなって思ってたし、彼女も諦められないでいたしさ」

269: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:50:49.48 ID:COd6JsKY
Kは俺の本質に気付いていたわけではなかったのだ。
ただ、中学の頃の評判を嗅ぎまわってあんなことを言ったのだ。

270: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:51:34.27 ID:COd6JsKY
「おまえ、本当はそんなやつじゃないんだろ?」

271: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:52:31.25 ID:COd6JsKY
そして、そこには恋愛がらみの男の嫉妬があった。

誰にでも人当たりが良いKが俺にだけ当たりが厳しかったのも、
あかねとのことを応援したり、他の娘をけしかけたりしたのも、
Kが俺に付き合い始めた自分の彼女のことを紹介しなかったのも、
全てはそこに、理由があった。

272: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:53:22.10 ID:COd6JsKY
俺は、今日この会に来た理由、
つまり、Kにひとつだけ聞きたかった質問をぶつけてみた。

273: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:54:34.30 ID:COd6JsKY
「今さらだけど、おまえがあかねを振ったとき、
俺に悪いからって断わったんだってな?」

Kの表情が曇った。

「なんでだ?」

274: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:55:14.01 ID:COd6JsKY
Kは黙り込んだ。

「好きな娘がいるからでは駄目だったのか?」

275: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:55:54.36 ID:COd6JsKY
そのせいで、俺はあかねに邪険にされた。
あかねはKに対して諦めがつかなかった。
俺さえいなければ、Kと付き合えたかもという希望を持った。
こじつけかもしれない。けれども、その一言がなければ、
あかねもただの幼い恋を拗らせなかったのではないか。

276: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:56:38.76 ID:COd6JsKY
「ごめん。ぶっちゃけていえば、たかおに勝ちたかった。
唯一手にした優越感に浸っていたかった。」

278: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:57:19.41 ID:COd6JsKY
しばらく黙ったあと、Kはそっと白状した。

279: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:58:03.68 ID:COd6JsKY
俺は不思議と腹が立たなかった。
Kに詰まらないことを聞いた、と詫びて、もう一度、おめでとう、と言った。

280: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:59:15.47 ID:COd6JsKY
やがて、同窓会はお開きになり、2次回の誘いを断わった俺は、
Kと俺の高校生活を思いながら電車に乗り、家路に向かった。

281: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:00:10.07 ID:COd6JsKY
ボタンの掛け違え、などとひとは言うかもしれない。
何かがほんの少しすれ違い、
そのすれ違いが気付かれないまま放置されると、
大きな歪みに育って行ってしまう。それがボタンであったらどんなに良いか。

282: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:01:03.87 ID:COd6JsKY
でも現実は、もう、やり直しのきかない、人生の過ちなのだ。
Kに、俺とあかねの真実を話したら、Kも罪を背負うのだろうか。

284: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:03:15.37 ID:COd6JsKY
であるとするならば、罪とはひとが作り上げるものではなく、
実はそこかしこに、転がっているものなのだろう。
何かの拍子に触れてしまった人間だけがその存在に気付いてしまう。

285: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:04:18.79 ID:COd6JsKY
Kはこの先あかねのタヒの真実に触れることはないだろう。
あかねが生きていたことと同じようにあかねのタヒも忘れてしまうのだろう。

286: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:05:25.08 ID:COd6JsKY
俺はKにあかねの事を話さなかった。
けれども、それはKを思いやってのことではない。

287: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:06:03.31 ID:COd6JsKY
あかねの声が聞こえた気がしたからだ。

288: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:06:45.06 ID:COd6JsKY
「このことは、K君には話さないでね」

289: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:07:28.32 ID:COd6JsKY
俺はそれきり、Kには会わないでいる。

290: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:09:01.99 ID:COd6JsKY
終わりです。最後まで見ていただいたかた、ありがとうございました。

文章下手でごめんなさい。

238: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:23:55.79 ID:+im1HRAX
どうでもいいけど懺悔なんか「お前が言ってスッキリする」効果しか
なくてタヒ人にとって何のメリットもないんだよ
しかもそういうことを2ちゃんに晒しちゃう馬鹿さ浅ましさがその子を
杀殳したんじゃないの?

246: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:27:30.89 ID:+im1HRAX
覆水盆に返らず
贖罪の不可能性も、贖罪が自分の利益のためであることも
認識してない馬鹿だなお前は

263: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:43:38.65 ID:R1dAM66R
いや1の行動はあかねの人生になんも関係ないよ
そう思い込みたい1の願望だよ
そんな大事な女性なのに葬式もいかんとかありうるんかなあ

252: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:31:47.23 ID:R1dAM66R
あかねさんになんもかかわってないのに
自分が強く関わったことにしときたいっていうやつやねー

266: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 05:47:31.34 ID:COd6JsKY
>>263
あかねの人生に関係ないといわれるのは、正直複雑です。
楽になるきもするし、認められない自分もいる。
どちらにせよ、生きてる人間にしか決められない。

283: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:01:06.94 ID:R1dAM66R
>>266
関係ないよそこまで深く関わってないもん
それかかかわり合った描写が足りてないと思う
おこがましいんじゃない?タヒなせてしまったとか

291: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 06:10:57.22 ID:COd6JsKY
>>283
そういうものなのか?人との関わりって難しいね。

313: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 08:47:04.91 ID:PL/+VGbO
1が感じているほど「あかね」は「たかお」の事を思ってはいないよ。
「k」への告白で振られた事も「たかお」の存在のせいにしてるだけ。

基本「あかね」はただの自己愛者にしか思えない。
1は「あかね」のタヒに対して幾ばくかの責任を感じているようだが、
全く必要無いと思う。

322: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 09:15:19.41 ID:vgbtn3Mx
あかねの転落の始まりはどこかっていうと、上司との不倫だろうね

でも、その原因はなにかと言うと彼女のKへの未練じゃなくて、
その代用を不倫でしちゃったことだろうね

352: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 11:48:40.54 ID:YABivKP8
あかねの生き方は同じ女として好きになれない
自分の悲運に酔った生き方だ
そんな人はボタンのかけ違いがなくとも
幸せになれない

亡くなってしまったのにゴメンなさい

357: 名も無き被検体774号 2017/05/10(水) 12:12:25.21 ID:rAYQTBxw
>>352
心に痛みを与えないと、心の存在を確認出来ない事もある。
それは誰にでも起こりうる事で、それを以って、あかねを愚かだとは思わない。

弱い人間がいるのではなく、弱くなるときがあるのだと思う。


引用元:http://hayabusa8.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1494348190/

1000: 名無しさん@HOME

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コメント

  1. 1 噂の鬼女様 2017年05月25日 23:09 id:U5HzVAdV0
    2,3レス読んでこれは無理そうだと思ってスクロールしたら案の定長かった
    ど真ん中スレとかにいそうなタイプだな

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